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「働く」からみた発達障害

 

 平成26年現在、高校生を持つご両親が高校生の頃の大学進学率は、女性12%強、男性40%弱でした。今では女性45%前後、男性55%前後と半数の高校卒業生が大学に進学をしています。ご両親と同学年の仲間は全国に200万人いますが、今の高校生の仲間は150万人を切っています。子どもは減っていても、大学の数はご両親の頃には500弱だったのが今では800まで増えています。

 発達障害を抱えて学校生活を送ってきた高校生も大学に進学をし、就職をする方が多くなっています。大学に在籍している学生さんのうち障害者手帳を持っている人は0.3%と言われています。障害者手帳は「身体・知的・精神」の3種類あり、その合計での数値です。障害者手帳を持っている人は総人口の6%と言われていますのでその少なさが分かると思います。発達障害を抱えている方が精神保健手帳を持てるようになったのが平成23年からですのでその歴史は他の障害者手帳に比べると歴史が浅いです。特に発達障害を抱えている方のうち手帳を必要とされる割合は学校教育を受けている間は少数という現状があるからだと思います。

 学童期までに医療機関を受診し診断を受け特別支援教育で様々な学習をされた方もいれば、「グレイゾーン」という曖昧な表現のまま過ごしている方もいらっしゃると思います。また,高校生・大学生・社会人の年齢になって医療機関の扉を初めて開ける方もいらっしゃると思います。更にご家族の方が心配をされていてもご本人は全く意に介せず生活をされている方、この方達が最も多数だと思います。

 これからお伝えします「働く」からみた発達障害では、主にASD(自閉症スペクトラム)の方が「働く」を中心に進めていきます。当面接室では「働く」を意識しながら面接を重ね,ようやくアルバイトができるようになり、就職活動に動き出せるようになる方など「働く」の入り口に立てない方が多数いらっしゃいます。また、就職はしたものの離職し閉じこもりの生活からもういちど「働く」の入り口に立とうとしている方もいらっしゃいます。最初はご家族の方のご相談から始まり、ご本人への訪問面接を経てご本人が面接室まで来られるようになり「働く」入り口に立とうとしている方もいらっしゃいます。

 目の前に「働く」が迫っている方、将来の「働く」に不安のある方、「働く」に苦しめられている方、そしてご家族の方、一度当面接室にご相談を下さい。信頼できる医療機関と連携をとりながら、じっくりとご相談を続ける事をお約束します。

◆とある千人規模の従業員が働くアパレルメーカーでは5年以上前から発達障害の方が働いています。発達障害の方を採用する決め手となる点は
・最低限の意思疎通が取れる
・働く意欲、向上心がある
・アドバイスを受け入れる勇気、素直さ
・時間・約束が守れる
・挨拶、「報・連・相」、謝る、ありがとうが言える
・医療的な支援が服薬で可能になる
を上げています。

採用して良かったと思った点は
・特定領域で高い能力を発揮できる
・黙々と誠実に仕事を続けてくれる
・まじめ
・無駄口がない
を上げています。

これからの課題として
・特異な行動・言動に対する周囲の理解
・或程度の柔軟性と企業社会への適応の可能性
・うたれ弱さ
を上げています。

◆また、とある千人規模の従業員が働くスーパーマーケットチェーンでは15年以上前から障害者雇用に積極的に取り組み、この数年は発達障害の方の割合が増えています。ここの採用基準としては、
・客が意識できる
・一人で安全に仕事ができる
・研修により上達が見込める
・体調が安定している
を上げています。

各店舗の工夫として
・ノルマはつけない
・休憩時間の工夫
・体調に合わせた職務
・話し合える環境作り
・被差別意識を持たせない工夫
・人事部・支援機関との連携
を上げています。

働く人への要求として
・体調が悪いときには連絡をしてほしい
・仕事がきつい・辛い時は報告してほしい
・対人関係で困った時は相談してほしい
・困ったこと。分からない時は話してほしい
を上げています。

 この2社で働いている方は手帳を持って就職している方です。障害者雇用促進法に基づき、50人以上の従業員を持つ会社は2.0%障害者を雇用しましょうというという事になっています。100人なら2人は雇用しましょう、もしできないなら月5万円/1人の納付金を納めて下さい。1人多く雇用された場合は月2.7万円の報奨金を出しましょうとなっています。ちなみに、2.0%は民間企業を対象にした数値で、国・地方公共団体では2.3%となっています。

 ハローワークを経由して就職した発達障害の方のおよそ80%が手帳をお持ちの方です。手帳の取得時期は35%の方が1年以内の取得で、30%の方がハローワークに来てから取得された方です。取得してから5年以上経過している方は3%しかいません。先にお伝えしましたように学校教育では必要性があまりない手帳である事が数値の上でもよく分かります。手帳無しで就職された方も18%いらっしゃいます。就職後の在職率ですが、79%が在職されておりますが16%の方が離職されています。離職された方の多くは手帳をお持ちでない方でした。(障害者職業総合センターの調査結果)

 先に例として上げました2社ですが、最初の会社にお勤めの方はスペクトラムの中心に近い方、2番目の会社はそれほど中心にいない方と捉えてよろしいと思います。ASDの方に適職とされるお仕事は

・細部への注意と正確さが要求される仕事・・・・・データ入力
・定型的で反復性のある仕事・・・・・・・・・・・ファイリング、仕分け
・数字や事実を扱う仕事・・・・・・・・・・・・・会計
・明確な手順のある仕事・・・・・・・・・・・・・郵便物受け取り、図書
・正誤の判断を伴う高度に構造化された仕事・・・・IT、プログラミング

と、一般的には言われています。例1の会社がこれにあてはまります。ASDはスペクトラムと言われているようにこれらのお仕事が向く方もいれば例2のような必ずしも定型で反復性があるわけではなく、柔軟に対応する事を要求される仕事でも可能な方もいらっしゃいます。

 実際にASDの方が働く職場でどのような事が問題となっているかを見てみましょう。ASDには

・社会性の困難性
・コミュニケーションの困難性
・こだわり

があると言われています。
「社会性」では、
・指示されているルールは守れるが、職場の暗黙のルールに混乱してしまう
・場の雰囲気を読むことが苦手で、適切でない返答をしてしまう
・注意を受けると、相手が自分を嫌っているように感じてしまう
・自己流で行動してしまう
・苦手な音や文字などの情報があると必要なことを選択しにくい
等があります。

このような困難性に対して職場ではどのような対応をしているのでしょうか。
・確実に守るべき指示は、図式化を活用して文章やメモで具体的に示す
・比喩や視線ではなく、直接的・具体的に説明したり質問する
・苦手な音や文字などを把握し落ち着いて集中できる環境を整える
等の対応をしています。

「コミュニケーション」では、
・上司や同僚など、人によって接し方を変えることが分かりにくい
・電話での応対がうまくいかない
・質問のタイミングがつかみにくい
・突然興奮したり、怒りだしたりする
等があります。

このような困難性に対して職場ではどのような対応をしているのでしょうか。
・それぞれの役割を明示し、接し方のモデルを示す
・あえて電話の応対は求めない
・サインに気づいたら、声かけをする
・落ち着ける環境を整え、平静を保つ
等の対応をしています。

「こだわり」では、
・優先順位が分からなくなる
・経験のないことに強い不安を抱く
・予定変更に強い不安を抱く

このような困難性に対して職場ではどのような対応をしているのでしょうか。
・手帳などを利用して、担当作業をするとアップさせる
・指示、例示、研修、確認などにより経験を積ませる
・作業時間、工程を予め確定する
等の対応をしています。

 このような困難性とその対応は働こうとするご本人がどの程度「自覚」されているかが大切になります。
 そこで、冒頭にお伝えしました『学童期までに医療機関を受診し診断を受け特別支援教育で様々な学習をされた方もいれば、「グレイゾーン」という曖昧な表現のまま過ごしている方もいらっしゃると思います。また,高校生・大学生・社会人の年齢になって医療機関の扉を初めて開ける方もいらっしゃると思います。更にご家族の方が心配をされていてもご本人は全く意に介せず生活をされている方、この方達が最も多数だと思います。』のどれに当てはまるのかが重要になります。

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